世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「楽しみだね、秋祭り」

「うん」

「私、小さい頃以来だなぁ」

「私も。親と小さい頃に行って以来だと思う」


翡翠との帰り道。

話題は来週の秋祭りのことだった。


「坂瀬くん、緊張してるみたいだったよね、言ってるとき」


翡翠はそう言ってクスクス笑う。


「確かに緊張してるみたいだったね、何でだったんだろ」

「...日和ちゃんがいたからじゃない?」

「え...?」

「日和ちゃんが好きだから、とか」

「そんなこと...」

「あるって!もう、謙遜ばっかりしてたら、私が坂瀬くんのことまた好きになっちゃうよ?」

「それは...ちょっと困る、かも」


私の返答に、翡翠はまた笑った。


「ふふ、冗談だよ。二人のこと応援してる」


翡翠の言葉に、素直に「ありがとう」と口に出せた。

翡翠は「どういたしまして」と微笑む。

なんとなく、翡翠には負けるな、と思った。
私のことなんて、お見通しなんじゃないかと思う。
それに対して嫌な気持ちなんてなかった。
逆に、嬉しかった。
親友というものの定義は分からない。
それでも胸を張って言える。
翡翠は私にとって、最高の親友だと。

坂瀬くんとは、どうだろうか。
もっと、距離を縮めたり出来るだろうか。
ゆっくりでも、もっと。
翡翠と私のように。

この秋祭りで、何かが変わったりするんだろうか。
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