世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「良かった、同じ気持ちでいてくれて」


天馬は、そう言って息を吐いた。


「私も...安心したし、嬉しかった」


さっきより近い距離。
その距離が、どんどん縮まっていく。

そして、坂瀬くんの目が、目の前に見える。

その目が、ゆっくりと閉じられた。

深くは考えなかった。
なんとなく、分かっていたように、私も目を閉じた。

ドクン、ドクンと心臓が大きく鼓動を打つ。
顔が、熱い。

そう思っていると、口に触れる感触。

それはとても固くて、私は思わず目を開けた。
私の唇には、さっき坂瀬くんが買った林檎飴があった。


「さっきの林檎飴...」

「はは、びっくりした?」

「もう、からかわないでよ」

「謝るよ、ごめん」


クスクスと笑う坂瀬くんを、ふざけて睨む。


「でも、今の日和、この林檎飴みたいだよ」

「え?」

「真っ赤な林檎飴より真っ赤な日和。花火より綺麗で、可愛い」


悪戯っ子のように笑って天馬は私に林檎飴を渡した。

キザなような、子どもっぽいような、そんなセリフに、自然と笑みが零れた。
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