世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「でも、天馬は完璧だった。体は成長するし、感情も持っている。性格も言動も、造られた後に形成されたものが多い。つまりは、人間と同じなんだよ。人間と、何一つ変わらない。造られたときに全て入れられていたんだ。6歳であれば持っている知識は全て。学習能力だってある。人間としての完成度は、100%...のはずだった」


青柳颯太は目を伏せる。


「ただ、ただ一つだけ、欠落してしまったんだ」

「それが...色を認識すること?」

「あぁ。それを知った施設の人間は、薬を作った。色を認識するための、薬。ただ、それは服用しすぎると盲目になるというものだった。人間として完成してしまった天馬は修理することが出来なかったんだ。天馬はその金平糖だけを持たされ、施設を出た。それが全てだよ」


頭が混乱して、どうにかなりそうだ。

人間でない、人造人間。

そのことが一番の驚きだった。

でも、そんなことより。

そんなことより、大切なことがある。


「...早退、する」


私の言葉に、青柳颯太は何も言わず、頷いた。


「天馬が人造人間だったとしても、私にとっては大切な人なの。...守りたい、助けたい。感情だって、あるんでしょ?それなら...それならきっと、辛いはずだから」


私が立ち上がると、青柳颯太も立ち上がった。


「行くか」

「来てくれるんだ」

「ただし、俺のことはフルネームで呼ぶな」

「...了解、青柳颯太」

「お前俺の言葉聞いてねぇだろ」
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