世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「一緒にいるうちに、願ってしまったんです。同じ景色が見たい。彼女と同じ、色鮮やかな世界が見たいと。金平糖を食べて、彼女が見せてくれた世界に、驚きました。こんなに綺麗なんだって。すごく幸せでした。だからこそ、怖いんです。彼女の前に姿を現すのが。視力を失った俺は、何をするか分からない。だから...だから俺を」


その声は、いつもより透き通っているように聞こえた。

鈴の音色のようなその声は最悪な言葉を紡ぐ。


「壊してよ、マスター」


いつになく、優しい。
いつになく、落ち着いている。

その声とは真逆の言葉に、私はいてもたってもいられなくなった。


「ふさけないでよ...」

「遊佐?」

「ふざけんな天馬!」


天馬の名前を叫ぶ。

青柳颯太の言葉なんて、私には届かなかった。

ただ、天馬を、救いたかった。
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