世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
学校について、有理は友達の輪の中に入っていく。

私は席につき、本を取り出した。

『Teary eyes』という本で、私が愛読している本。
一人の少女は、いつも涙を目に浮かべている。
それは、世界が美しすぎて、自分があまりにも惨めだと思い続けているから。

世間からは賛否両論を受けているこの小説だけど、私はこの本に愛着が湧いてしまっていた。

彼女は私達と同じ世界を見ているのに、それを美しいと思い、涙を浮かべている彼女が、とても綺麗な人だと思うから。
そして私も、そんな景色を見てみたいと思うから。

どんな世界を見たって、私は景色を見て涙を浮かべた事なんて無かった。
まぁ、無い人の方が多いんじゃないかと思う。
だけど、この本を読むことで、この小説の中の彼女に、近づける気がしていた。
彼女に触れて、世界を見せてもらうことが出来るんじゃないかと。

私は栞が挟んであるページを開いた。


「ねぇ」


そして、読み進めようとした時、頭上から声が聞こえた。


「それ、何ていう本?」


私は本から視線を外し、頭上を見上げた。

そこにいたのは、坂瀬くんだった。
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