世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「遊佐...?」

「...いいからっ、青柳颯太はもう、手を出さないで」


青柳颯太から天馬を引き剥がし、押さえつけようとする。
でも、凶暴化してしまった天馬の力は、普通の人間とは思えないほど強く、一瞬で身動きがとれなくなる。

そして、天馬の両手は、私の首元に触れ、そのまま力を込め始めた。

息が、出来ない。
苦しい、痛い。

天馬の顔を見上げる。

鋭く光る目は、私を睨み付ける。

でも、その天馬に重なって見える、あの優しい笑顔が、私にとっては本物の天馬に見えた。


「天、馬...」


意識が薄れていく。

目の前の天馬は、いつも通り優しい笑みを浮かべている。

首元がギリギリと痛む。
呼吸が出来なくて、苦しくて、生理的な涙がじわじわと溢れていく。

私は最後の力を振り絞り、体を起こそうとした。

天馬の力が、少し弱まる。
そのまま私は、天馬に口付けた。

そして、意識を手放した。
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