世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「じゃあ天馬には今、片目だけ色が見えるの?」

「うん。日和が見てきた景色の色は、見える。...本当に、ごめん。人格が変わってたとはいえ、日和から奪うなんて、最悪だ...」

「...そんなこと言わないでよ。天馬が奪ったんじゃなくて、私があげたんだよ」


そう言って微笑むと、天馬は泣きながら笑った。

そう。
天馬は私から奪ったんじゃない。
私の恩返しを、天馬が受け取ってくれただけ。
私が申し訳なさを感じないように、少し不器用な方法で。


「...イチャイチャしてるとこ悪いけど、俺のこと忘れてないか?」


そして横から聞こえた、青柳颯太の声。


「颯太!...大丈夫?」

「いやー...かなり痛いわ」


痣がある目元、腫れた頬。
痛々しい顔で、青柳颯太は笑った。


「本当、ごめん。でも、颯太からは色を奪ってないみたいだな...何でだろ」

「...それは多分、血だ。怪我をさせ、その血に触れることで、色を奪ったんだろう。お嬢さんの首には、天馬の爪が食い込んでできたことによる5つの傷から血が流れているからな」


背後から、その答えが聞こえた。
< 149 / 154 >

この作品をシェア

pagetop