世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
この本はもう何度も読み返しているから、読み終わっている。
だから今すぐ貸すことも出来た。

でも、坂瀬くんは本当に読みたいんだろうか。
適当に私に話を合わせてくれただけじゃないだろうか。

色々と考えるけれど、考えれば考えるほど疑問は増えていく。

どうして坂瀬くんは私に声をかけたのか。
とうして坂瀬くんはこの本に興味を示してくれたのか。


「日和ちゃん」


翡翠が私の元に来る。


「坂瀬くんと何の話してたの?」


翡翠は笑みを浮かべて聞いてくる。


「えぇっと、別に、そんな大したことじゃないよ」

「えー、気になるよ。だって日和ちゃん、すっごく楽しそうだった」

「楽しそう?」


私が?


「うん。それに、坂瀬くんも。二人ともすごく意気投合してるって感じだったよ」


坂瀬くんも...?


「二人とも、話してるところ見たこと無かったけど、気が合うんだね」


翡翠の純粋な笑顔に、私は不思議な気分になる。

坂瀬くんは人気者。
誰にでも笑顔で、聞き上手で。

だからきっと、私の話にも合わせてくれてたんだと思う。

坂瀬くんの方を見た。
もうみんなに囲まれてて、いつもの薄笑いを浮かべて頷いている。

別に、気が合うわけじゃ。
< 16 / 154 >

この作品をシェア

pagetop