世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
次の日の放課後。
私は美術室で坂瀬くんを待っていた。

というのも、坂瀬くんが「遅れていくから美術室で待ってて」、と言ったから。

でも、10分、20分経っても、坂瀬くんは来ない。
何かあったのだろうか。
それとも、来る気がない、とか...?

色々考えて、私は教室に戻って坂瀬くんの様子を見てみることにした。

教室に着き、開いているドアから教室内を覗く。

夕日に照らされていて、オレンジ色になった教室に一人、坂瀬くんが自分の席に座っている。

何をしているんだろう?
よく見ると、坂瀬くんの手には小さな瓶があった。
その中には、星の形をした、小さなもの。

坂瀬くんはそれを取り出して、眺めていた。

そして、聞こえてきたのは、坂瀬くんの鼻歌。
聞いたことがない、知らない曲。
穏やかなようで、なんとなく、そのメロディーは狂気染みているような気がした。

そして坂瀬くんは、その星形のものを口に含んだ。

金平糖...?
梨沙が言っていた星形のものって、金平糖のこと?

坂瀬くんは金平糖を舐め、立ち上がった。

私は慌てて教室から離れ、たった今ここに来たように装う。


「あ、遊佐さん」

「坂瀬くん」

「ごめん、待たせたよな。今行こうとしたんだ」

「ううん、大丈夫」

「ありがとな。じゃあ、行こうか」


そう言った坂瀬くんの表情が、今まで見たことがない表情だった。

目を輝かせ、どこか生き生きとしていて、まるで、新しい玩具を手に入れた子どものよう。

坂瀬くんの後ろを着いていき、私達は美術室に向かった。
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