世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「あー...重い...」


教材の重さに目が座る。
当たり前だ。40人分の教材なんて、一人で持つ物じゃない。
先生も誰かもう1人ぐらい指名してくれればいいのに...なんて不満がモヤモヤと出てくる。

ふらつきながら、どうにか階段を登り、教室の前まで着いた時。

私は、足を止めた。

ガシャン、と大きな音。
そして、男子の怒鳴り声...?


「ふざけんなっ」


そしてまた、大きな音。

私は恐怖心と好奇心の間で揺れ、教材の重みも忘れて、そっと教室内を覗いてみた。

カーテンが閉まった教室。
でも、カーテンの隙間とドアから漏れた光で見える、二つの影。


「...ごめん、ごめん」


もう一人の声が聞こえた。

その声は小さく、震えているようだった。

そして、確信してしまった。

その声は、聞きなれた声だ。
最近、よく聞いていた声だ。
少し高くて、優しげな声だ。
いつもみんなを笑顔にする、私を楽しくさせてくれる声。


紛れもない、坂瀬くんの声だ。
< 37 / 154 >

この作品をシェア

pagetop