世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「わぁ...」


思わず、そう声を漏らした。

翡翠が描いた大きな絵の前で、私と翡翠は並んで立っている。

私は絵については全く詳しくない。
それでも、この絵が凄いことは、私にも分かった。

未完成の段階では何度も見ていたけど、完成した絵を見ると、思わず圧倒され、息を呑む。


「どう、かな?」

「凄い。いや、なんか凄いしか言えないんだけど」


私の言葉に、翡翠は「何それ」と笑った。


極彩色、だけどそれだけじゃない。
繊細なタッチ、淡い色。

全てがこの絵の中に詰め込まれているのに、邪魔な要素は1つもなくて、全てが共存している。

明るい気持ちにも優しい気持ちにも騒がしい気持ちにも落ち着いた気持ちにもなる。
それが不思議で、まるで手品みたいだと思った。


「さすが翡翠」

「それほどでも」


おどけたように笑う翡翠に、私も笑みを零した。
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