世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「酷い熱ね。それにくまもあるから、睡眠不足でもあったんじゃないかしら」


保健室の先生がそう言って、心配そうに青柳颯太を見た。

青柳颯太は目を閉じ、静かに眠っている。
ただ、少し荒い息は、彼が辛いことを物語っていた。


「でも、珍しいわね」

「えっ?」


先生の言葉の意味が分からず聞き返す。
先生はふっと優しい顔になり、教えてくれた。


「青柳くんが誰かと一緒にいるところ、あまり見たこと無いのよ。それに彼、あまり体が強い方ではなさそうでね。前も体調が悪そうだった時があったんだけど、何を言っても保健室に来てくれなかったの。大丈夫だから放っておいてくださいって突き放されちゃって、聞く耳を持ってくれなかったのよ」


「やっと来てくれたわ」と先生は困ったように微笑んだ。

それはきっと、坂瀬くんが関係しているんだろう。
彼は、坂瀬くんには自分がいなきゃ、と言っていたから。


「遊佐さんになら言えるのかしら」

「いえ、そういうわけじゃないですよ。きっと」


どちらかと言えば、嫌われているんじゃないかと思う。


「じゃあ、私、担任の先生に連絡してくるから、少しここにいてもらえるかしら」

「分かりました」


私は先生の後ろ姿を見送り、青柳颯太が眠っているベッドの横の椅子に腰掛けた。
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