世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「...俺の熱、何度?」

「えっ、38度8分らしいけど...かなり高いよ」


突然の質問に戸惑いながらも、私は答えた。


「そっか。じゃあ、今から俺が言うのは、全部その高熱のせいってことにしてくれ」


そう言って彼は、私を見ていたずらっ子のような顔をして笑った。


「俺は、天馬を守りたい。ただ、それだけ。でも、そのためにお前を傷付けるのは、なんか、間違ってる気がした」

「何それ」

「お前は俺のこと嫌いだろうけどさ、俺はお前のこと、そんなに嫌いじゃねーよ」

「何なの、意味分かんないし...」


本当は、少し嬉しかったのかもしれない。
だけど、やっぱり私は、翡翠みたいに素直になれなくて。


「...俺も何言ってるか分かんね。あー...全部熱のせいだな」


彼は片手で顔を隠す。
そんな彼の新しい一面に、可愛らしい、と感じてしまった。


「友達くらいにはなってあげるよ。アンタ、友達いなさそうだし」


てっきり、「余計なお世話だ」とか「結構だ」とか、言われるかと思っていた。

彼は冷たくて、目付きが悪くて、いつも不機嫌そうなイメージだから。

でも彼は、何を言うでもなく、優しく、そして、少し泣きそうな顔で、曖昧に微笑み、すぅっと眠りについてしまったのだった。
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