世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
それから私は授業に戻るように言われ、生物室に向かった。

教室に入ると注目を浴び、少し居心地が悪かったが、先生は事情を知っているらしく授業を続けていた。

坂瀬くんは扉の方を見ている。
きっと、青柳颯太の姿を探しているんだろう。

やっぱり、青柳颯太が坂瀬くんの近くにいないことは、坂瀬くんにとってもあまり無いことなのだろうか。

一緒に話さなくても、同じ空間にいる。

それが、二人のいつもの距離なのかもしれない。
青柳颯太は、坂瀬くんのことをそれほど思っている。

『俺が、俺がいてやらねーと...』
『俺は、天馬を守りたい』

青柳颯太の言葉を思い出す。
青柳颯太にとって、坂瀬くんにとって、お互いはどんな存在なんだろう。

被害者の坂瀬くん、被疑者の青柳颯太。
最早そんな考えは、私には無かった。

守られている坂瀬くん、守っている青柳颯太。
初めとは真逆の今の考えに、また悩む。

近づけば近づくほど二人は分からない。

でも、二人ともいい人なんだってことは分かる。
坂瀬くんはもちろん、青柳颯太も、悪いヤツじゃない。

ただ、不器用な人なのかもしれない。

友達になってあげる、と言った私の言葉に、あんな表情をして微笑んだのが、私にとっては十分な証拠だった。

すごくいいヤツかどうかは分からないけど、友達くらいにはなってあげる。

いや、友達になってみたいかもしれない。

坂瀬くんとの仲を離した張本人である彼を、私は少し、気に入ってしまった。
< 69 / 154 >

この作品をシェア

pagetop