世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「...あのさ」


生物室から教室に戻る途中、後ろから声をかけられた。

振り返ると、そこには目線を逸らした坂瀬くんの姿。


「...何?」

「...颯太は?」

「えっと、保健室。熱があって」

「...そうなんだ」


坂瀬くんは青柳颯太に熱があると聞かされ、顔を歪めた。
まるで自分が体調を崩したように。


「...颯太のこと、保健室に連れて行ってくれたの?」

「うん。たまたまその場にいたから」

「そっか。...ありがと、遊佐さん」


まるで青柳颯太の保護者みたいな言い方。


「何その言い方」


私がそう言って軽く笑うと、「俺も言ってておかしいなって思った」と坂瀬くんも笑った。

前のように自然には話せない。
やっぱりどこか距離がある。

それでも、話せたことが嬉しかった。


「よかったらさ、一緒に教室まで行かない?」


坂瀬くんの誘いに、私は小さく頷いた。
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