世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「で、でも、そんなの...」

「俺は、お前らに一緒にいてほしい。まだ天馬のこと諦めてねーだろ?だったら、俺がお前を傷つけるふりをして、天馬にお前を守らせる。もしくは、俺が天馬を突き放して、お前が天馬を慰める。例えば、そんな風にする、とか」

「待ってよ!そんなの、アンタが...それをされて何とも思わないの?」

「...何とも思わねぇことはないかもな。でも、俺はお前を振り回したし、傷つけた。だったらお前も俺を好きに使えよ。お前は俺のこと好きじゃないんだし、俺がお前のことが好きなこと、都合よく利用出来るんじゃねぇの」


青柳颯太の表情から、それが冗談で無いことが見てとれた。


「そんな...そんな最低なこと出来るわけ無いでしょ!なんで...なんでアンタはそんなに自己犠牲なのよ!」


涙が零れそうになるのを、必死に堪えた。

さも当たり前かのように自分を犠牲にしようとする青柳颯太を、私は見てられなかった。


「俺には、それしか出来ねぇ。利用してやってくれよ。俺は、その方法以外知らねぇ」


昔から、兄にならなきゃと思ってきた青柳颯太は、自分を犠牲にすることしか知らないのかもしれない。

それか悲しくて、辛くて。


「俺はお前と天馬の...兄貴になりたかった」


それを理由に、私達に自分の全てを捧げようとしてしまうのだ。
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