世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「そんなこと...望んでない」

「でも、お前らが一緒にいるには、天馬にお前のことを気付かせなきゃいけねぇんだ。今天馬に必要なのは、白河でも俺でもない。多分、お前なんだよ」


切なげな表情に、胸が苦しくなる。


「私には、アンタも必要なんだよ」


本心から、そう言った。

恋愛の意味とはまた違う。
多分、違う。
でも、青柳颯太は私にとって大きな存在になっていた。


「...そんなこと、言うなよ...」


困りきった彼の声。


「そんなこと言われたら、揺らぐだろ...」

「えっ...?」

「...頼むから、もうそんなこと言うなよ。俺は、お前を諦められなくなる...」


消え入りそうな声だった。


「こんなの、初めてだったんだよ。自分の気持ちを優先したくなる...天馬のことばっか考えてたのに、お前のこと考えて、天馬に渡したくないとか、自分勝手になって...」


青柳颯太の声は、震えていた。

自分勝手なんかじゃない。
でも、私は彼の気持ちに答えられない。


「...分かってる。お前が俺のことを好きじゃないことくらい。天馬のことを想ってるってことくらい。お前らが両想いなことも、ずっと前から知ってた」


青柳颯太は私の目を見て、そう言った。

真っ直ぐで、吸い込まれそうだった。
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