王子様と魔法使い
「何回も言ってるけど、誰とかどういう話が元なのかとかそういうのは教えない。それに、騒がないで。」
「あっ…ご、ごめんね?」
「でも、気になるじゃない?」
「そ、そうよね…?」
教室の空気が凍ったのを感じた。
クラスメイトは高坂の小説のことは触れてない。
よかったとか感動したとかそんな感想だけだけど他クラスや下級生の人は結構探ろうとしてるみたいだ。
「うざいよ。教師と生徒だろうが歳の差だろうが同性だろうが異性だろうがなんだろうがその人にとっては大事なもんなんだよ。
それを他人が探って面白がればそれでその人の心を傷つけるってわかってんの?」
「っ…だ、だったら、こんなの書いて載せなかったらいいじゃない!」
「自己満足にわたしはその人の思い出をハッピーエンドにしてるだけ。その人がやめろというなら消してる。
それでも少しでも心が軽くなる人がいるなら笑顔になるなら…ってそう思って書いてる。」
冷めた目で、でも真剣な瞳で相手を見つめる高坂は浩太が言うように堂々としててかっこよかった。
「俺は少なくとも高坂さんの魔法のおかげで今こうして笑えてる。
高坂さんが魔法使いと呼ばれてるのは高坂さんが書いた人たちが心から感謝してそう呼んでるんだよ。」
隣いた浩太が高坂の周りの女子に向かって話しかけた。
あっ…
人を笑顔にする魔法が使えるから
夢の世界でハッピーエンドにすることで現実と向きあえるようにしてくれるから、だから魔法使いなんだ……!