王子様と魔法使い

「あ、ごめん。みんなあなたのこと王子様って呼んでるからつい。」

「あー、いやいいよ。それより、高坂さんどうしたの?」


「明日提出のプリント忘れたの。とりたいんだけど…」


「どうぞ?」



いや、どうぞ?って言われても……



「あなたが座ってる席、そこ私の席なんだけど……」



「え?……あっ!ご、ごめんね?!」




慌てて椅子から立ち謝ってくる。


別に怒ってないんだけど、そんなに怒ってるように見えたか…?



軽く首を傾げながら机の中にあったプリントを取り出し、鞄にしまった。


「この席、お気入りなの。」

「……え?」





グラウンドの見える窓際の一番後ろ、そこが私の席。


「外のグラウンドが見える。廊下から遠いからうるさくもない。隠れて携帯も弄れる。」

「えっと…それはよかったね…?」


何が言いたいのか分からない様子で私を見つめる王子様。


困惑してる王子様可笑しそうに笑いながら
静かに言葉を続けた。











「それにこの席は先生からは私が見にくいけど“私からは先生がよく見える”の。」


そして

「この席はクラス全員の様子も“よく見える”の」






< 4 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop