サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜
「み、深月く……」
「ごめん、じゃないだろ。この間も言ったけど、これは俺の我儘だから」
「でも」
「でも、じゃない」
抱きしめる腕の力を少しだけ強めた。すると、安心したのか俺の胸に凛花が顔を埋めた。
「凛花」
「……なに……?」
「あの日、お前にあんな風にさせた事、凄く後悔してる」
あんな風に一人で溜め込ませて、一人で悩ませて、悲しい思いもさせて、そして、あんな風に酷く苦しくなるような行動をとらせた事。
ずっと、ずっと、後悔していた。
もっと自分が凛花を愛せていたら。もっと自分が凛花の小さな変化に反応できていたら。
そう思うと、自分が情けなくて、ただただ悔しくて、毎日がやるせなかった。
だけど
「……もう、あんな辛い思いさせない」
もう二度と、苦しませない。
「今度は、絶対に離さないから」
もう二度と、離したりなんかしない。
「……次こそ、幸せにする」
だから、どうか俺の手から離れないで。
俺の手で凛花の事を、今までの分も幸せにしたいから────。