サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜
「そ、そんなこと思ってないです!」
「はは、そう? ありがとう。でも、凛花ちゃんが干物女だったら少しびっくりだなぁ……凛花ちゃん、しっかりしてるイメージあるから」
「そうですか?」
「うん。仕事もちゃんと出来るし、我慢強い。まぁ、そういうところを見てると溜め込んでないかなって心配になるんだけどね」
朝比奈さんの優しい言葉と温もりに、涙が出そうになった。私は泣いてしまわないようにとゆっくり瞼を閉じて、心を落ち着かせる。
「あー、でも、干物な凛花ちゃんも悪くないね。それはそれで可愛い」
「あ、朝比奈さん……!」
何やら干物ネタで面白がっている朝比奈さんから出た『可愛い』という言葉に、過剰に反応してしまう私。
恥ずかしくて、ついつい朝比奈さんの胸に埋めてしまった顔。更に密着した二人の距離に胸の鼓動のスピードが増した。
「ほら、甘えんぼさん。ご飯食べよう。まだ食べてないんでしょ?」
「……はい」
朝比奈さんの腕に包まれたままの状態でソファーへと移動。そして、二人隣同士で腰掛けた。