サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜
一番隅のカウンターだけやけに空いていて、二人して同じレジに並ぶ。
ばったり会った時、すぐにその場を去ろうと思っていたはずなのに、どこまでも同じ行動をしている気がする。
運が良いんだか、悪いんだか……。
「……あ、まずい」
「どうしたの?」
先にレジに並んでいた深月くんのお会計の番がやって来た。だけど、店員さんが商品を通したところから進んでいない深月くんのお会計。
「財布忘れた」
「ええっ⁉︎」
「……仕方ない。一旦帰ろう」
「え!それじゃあ、私が代わりに出す……って、二人分買えるお金ない……」
肩を下げて諦めかけていた深月くんを見て、居ても立っても居られなくなった私は財布を開いて中を見た。しかし、私の財布には千円札と少しの小銭しか入っていない。
「俺はいいよ。今日はカップラーメンにでもするし。とりあえず凛花はこれ買いな」
「えっ、あ……うん。分かった」