サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜
なんとかレジを終え、材料の入ったビニール袋を片手に深月くんと歩き出した私。
「……なんか、ごめんね。私がもっとお金持ってれば良かった」
深月くんの横を歩きながら、ぼそりと呟くように小さく言った。
「なんで。凛花が謝る必要ないだろ。って、そんなことよりその荷物貸して」
「え、い、いいよ!このくらい」
「いいから。こういう時、女の子は黙って男に頼りなさいって何度も教えただろ」
「……そう、だけど」
昔から、人に頼ることに慣れていなくて、どうしても人に頼ることが出来なかった。
困ったことがあっても一人でなんとか解決して、悲しくても一人で抱え込むようにするのが当たり前で、それが一番楽なような気がしていた。
いつも、それでなんとかなっていた。
だけど、そんな私を変えたのは、紛れもなくこの人。
「たった二年で忘れちゃったか?」
「……忘れてないよ。別に」
忘れてない。忘れてなんかいない。
私に、頼っていいよって。もっと人に甘えていいんだよって。そう教えてくれて、その頼った時の暖かさを教えてくれたのは深月くんなんだから。