サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜


「できた!」


約十数分、キッチンに二人で肩を並べていた。二人だったからか、思ったよりも早く出来上がった肉じゃがと、炊き上がったご飯。それらをお皿に盛りつけ、テーブルへと運んだ。


「あー、久しぶりに食べるな。凛花の肉じゃが」


そう言って、嬉しそうに笑う深月くんに私も少し嬉しくなる。


「食べよう」

「そうだな。いただきます」

「いただきます」


二人手を合わせて、テーブルを挟んで同じものを食べる。


「………なあ、凛花。お前は今、ちゃんと幸せか?」


久しぶりに深月くんとこうして肉じゃがを食べるなぁ……なんて、呑気に考えていた私に飛んできた深月くんの言葉。それに私の手がピタリと止まった。


「え……? 何、急に」


ドクン、ドクン、と高鳴り続ける心臓。突然すぎる言葉に、動揺が隠しきれない。


「昨日、お前の部屋から出て行く男が廊下を歩きながら指輪をつけてるのを見た。ああ、不倫だな。って、その瞬間に分かった。不倫なんかよくある話だし、俺には関係のないことだけど、それが凛花なら話は別だ。もし、遊びとか中途半端な気持ちならやめておけ」

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