サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜

「……その辺でよくある不倫なんかと一緒にしないでよ!私は……ちゃんと真剣に彼のことが好きなの……!」

「へえ、随分偉くなったな。お前に恋を教えてやったのは俺だっていうのに」

「……そんなの、関係ないじゃない!もう昔のことなのに……深月くんは、もう関係ないのに……なんでそんなこと言うの!」


すごく悔しくて、切なくて、勢いよく手に持っていたお皿をテーブルに置いた。

ガタンッ、と音を立てたお皿が少しだけ揺れる。


「……好きだから」

「え……?」

「そう言ったら、どうする?」


真っ直ぐ、私を捉えた深月くんの瞳。少しの揺れもない、真っ直ぐなこの瞳が嘘や冗談を言っているなんてとても思えない。

だけど、そんなわけ……。


「今更そんな冗談言わないでよ……もう、あれから二年も経ったのに」

「悪いけど、冗談なんかじゃないから」


────ドクン、ドクン。

止まれ、止まれ。鳴り止め、私の心臓。



「……俺は、お前が好きだよ。変わらず、今も」



どうして今更、そんな言葉────。



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