サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜
過去
「凛花ちゃん、この受注データ私まとめておいたから。あとは宜しく」
「あ、ありがとうございます!助かりました」
「いーえー」
北沢さんから資料を受け取り、テーブルの上に置いた。すると、彼女がにっこりと笑って人差し指を立てた。
「あ。今日、ランチ一緒行こうか」
「あ、はい!是非」
ふと時計を見た。時刻は11時50分。ちょうどお昼休憩の時間だ。
「もう行っちゃおうか」
「そうですね」
休憩時間は基本12時から13時の間。だけど意外とルーズで、早く行く人もいれば、少し遅れて休憩に入る人もいる。
念のため他の社員に早めに休憩に入ることを伝えた私と北沢さんは、社内にある社員食堂へと一緒に入った。
「私は、ロコモコの気分だなー。凛花ちゃんは? 何にする?」
「えっと……和風豆腐ハンバーグ定食ですかね」
「うん。和風豆腐ハンバーグね。任せて」
「えっ!ちょっ、北沢さん!」
券売機にお札を入れ、何故か私の分の和風豆腐ハンバーグ定食のボタンまで押した北沢さん。
「この間の道連れ残業のお礼」
「え、でも、そんな。私だってさっき手伝ってもらっちゃったのに……それならロコモコの分は私が払います!」