サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜
「いやいや、それじゃあ意味ないじゃない。凛花ちゃんって本当義理堅いっていうか律儀っていうか、面白いよねー」
くすくすと笑いながら北沢さんが私の頼んだ定食を差し出してきた。私はそれを受け取りながら、少しだけ愛想笑いをした。
律儀という言葉で、ふと深月くんを思い出してしまった。
あれから数日が経ったけれど、運良く深月くんとは一度も会っていない。あんな言葉を聞いた手前、どんな顔をして会ったらいいのか分からない。
「ねぇ。早速なんだけど……凛花ちゃんって、朝比奈さんの事好きでしょ?」
「ぶっ……‼︎な、何ですか急に」
窓際の席に二人向かい合わせて座る。すると、北沢さんの口からはとんでもない言葉が出てきた。
私は、図星と言わんばかりのリアクションを取ってしまい、北沢さんはクスクスと肩を上下に揺らしながら笑った。
「なに、その分かりやすすぎるリアクション……!」
やめてよ、と言いながら笑い続ける北沢さん。やめて欲しいのはこっちの方だ。