サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜
「来るに決まってるじゃないですか。だって、会いたかったですから」
「……おいで」
爽やかな笑顔から、大人の表情に変わる。
大きなベッドの上から私を呼んでいる、この朝比奈明という人は……既婚者だ。
だけど、私の好きな人。
私が、求める人。
「朝比奈さん……好き」
ベッドの上の朝比奈さんに、ゆっくりと両手を回した。
「うん。僕もだよ。僕も、凛花ちゃんが好きだよ」
「朝比奈さん……キス、して」
「うん。分かった。たくさん、今日も愛してあげる」
いつの間にかベッドの上に倒されて、上から覆い被さるようにして私を見ていた朝比奈さん。
愛しそうに、恋しそうに、私を見る瞳に捉えられた。
そんな私の肩に、ひとつのキスが降った────。