サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜
「はは、そうだな。でも、お前が傷つくところ見たくないから。そう言ってやめてくれるなら、それ以上のことはないだろ」
「……分かんない」
「え?」
「私……深月くんが分からない。どうして今更そんな事言うの? 好きって言ったり、そんな優しい言葉かけてくれたり……私、あんな風に勝手に離れたのに」
別れの言葉も、ありがとうも、何も伝えずに勝手に去った。
連絡先も消して、実家も出て、本当にもう二度と会わないつもりで深月くんから離れた。
今考えれば、本当に自分勝手な行動だったと思う。置いていった私はいいけれど、置いて行かれた深月くんはどう思っていたんだろう。
どんな風に、この二年を過ごしていたんだろう。
「それはちょっと違うな」
「え……?」
「凛花が離れたんじゃない。俺が、凛花を離した」
お前はひとつも悪くない、なんて、何でまたそんな優しい言葉を私にかけるの。
どう考えたって、私が悪いでしょう?
「私が悪いんだよ。私が……私が、深月くんの気持ちが分からなくなって、勝手に耐えられなくなった。それで……深月くんを心配させて、傷つけるような事したの……全部、私が悪い」