サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜

「……凛花」

「ごめんなさい……」


深月くんの方を向いて、ずっと言えなかった言葉を口にした。

その瞬間、ぽとぽとと大粒の涙が廊下のコンクリートを濡らしていく。


「……バカ。だから、お前のせいじゃないって言ってるだろ」


相変わらず泣き虫だな、と言って深月くんが私を抱き寄せた。

久しぶりの深月くんの温もりに、高鳴る胸の鼓動。だけど、それに反して落ち着く胸の奥。


懐かしい匂いに、久しぶりに感じる温もり。全部が私のぐちゃぐちゃになっていた感情を落ち着かせていった。


ああ、あの頃にこの温もりをしっかり感じとれていたなら、私の今は変わっていたのかな────






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