サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜
「もう、我慢できなくなるくらい寂しかったんだ。凛花ちゃんに会えなくて」
「そんなの……私の方が、寂しかったです」
「そっか……そうだよね。ごめんね。寂しい思いばかりさせて」
「朝比奈さ……」
朝比奈さんが、寂しそうに、悲しそうに笑った。
そんな朝比奈さんに声をかけようとした時、段々と近づいてきた複数の足音。
廊下に響く足音に、反射的に離れた二人の距離。
「今日、いつものところで待ってる」
イスから立ち上がった朝比奈さんは、そう言って笑うと私に背を向けて去って行った。