サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜

「ううん。いいの。で、その話なんだけど……営業の寺坂くんとほぼ同じタイミングで抜け出したらしいけど……大丈夫だったの?」

「え……っと……ほぼ同じタイミングで店を出たかもしれないですけど、その後寺坂さんとは会ってないです」


私は北沢さんに嘘をついた。これ以上事を大きくしたくなかったし、それに、あの時は深月くんが来てくれたから何もなかった。だから、本当の事を言う必要はないと思ったのだ。


「そう? それなら、よかった。寺坂くんあまりいい噂聞かないから心配した」

「北沢さん……ありがとうございます」

「いいってことよ。でも、もし何かあったらいつでも言ってね」


じゃあ、と手をひらひらと振りながら去っていく北沢さん。そんな北沢さんの背中を見送り、私はまたパソコンと向かい合わせになった。



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