サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜
決別
────ガチャン。
家に帰りドアを閉めると、今まで堪えていた涙が一気に溢れ出てきた。
次々と頬を伝っていく大粒の涙。そして、時々抑えきれずに漏れる声。私は、しばらくその場で泣き続けた。
数十分泣き続け、少しだけ気持ちが落ち着いてくると私は寝室へと向かう。
すぐにベッドに寝転がり、うつ伏せになって枕に顔を埋めた。
数十分ひたすら泣き続けたって、まだ止めどなく流れようとしている涙。この涙は一体、いつになったら止まってくれるのだろう。
また私は大量の涙で枕を濡らし、ゆっくりと重たい身体を起こした。
「み……つきくん」
壁に手を置いて、向こう側にいるであろう深月くんの名前を呼んだ。
深月くんが隣にいてくれれば、きっと、一人でいるより気持ちも落ち着く気がする。そう思った。
深月くんの事だから、私が呼べば、きっとどこだって来てくれる。いつだって来てくれる。
だけど、そんな風に深月くんの優しさを利用することなんて、していいわけがない。
だから、私はもう一度ベッドに寝転がると枕に顔を埋め、声を押し殺して泣き続けた。