サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜

中に入るなり、リビングのソファーへと一直線に歩いていく私の今日一日の予定は、言わずとも寝て過ごすという事だけ。

毎週、休みの土日は寝て過ごす。これが定番……というか、これしかない。

たまに友達と遊んだりもするけれど、みんなには彼氏がいる。私に構っている暇なんてそうそうないのだ。

彼氏のいない私だって、好きな人と遊んだりデートをしたりしたい。だけど、朝比奈さんには家庭がある。奥さんが実家に帰っていたりしない限り、連絡はこない。


────ピロロン


しばらくの間テーブルの上で静かにしていた私のスマートフォンがメッセージの着信音を発した。

私は、ゆっくりとスマートフォンに手を伸ばしてメッセージを確認する。

すると、そのメッセージは意外な人からのものだった。


《今から家に行ってもいい?》


このメッセージの送信者は……私の好きな人、朝比奈さんだった。

私は急いで指先を動かし、返事を打った。そして、送信ボタンを押す。

言わずとも、もちろん返事はオッケーだ。

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