サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜
────翌日。
「……決めた」
深月くんと別れた後、一晩中ずっと考えていた。
私は、このまま朝比奈さんの『ただの部下』を演じ続けるのか。そして、朝比奈さんの事を好きでい続けるのか。
それから、深月くんの我儘という名の優しさに甘えるのか、甘えないのか。
考えて、考えて、考え尽くした結果。私は、ひとつの決着をつける事に決めた。
スマートフォンの画面の上で親指をスライドさせる。そして、ある人にひとつのメッセージを作成した。
《話したい事があります。もう一度、会えませんか?》
メッセージを送信する相手は、朝比奈さん。ゆっくりと親指で送信ボタンをタップし、作成したメッセージを送信した。
そして、私はスマートフォンをぎゅっと両手に握りしめた。
ソファーに腰をかけ、メッセージの返事を待つ事約20分。ようやく着信音と共に届いたメッセージに、私はゆっくりと目を通した。
《僕も話したい事がある。いつものところで待ってる》