サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜
再恋
「なんだ、次はどうした。本当にダメになっちゃったか?」
アパートの階段を上がり、廊下を歩いていた私は、また偶然深月くんに出くわしてしまった。
泣き腫らしている私を面白がっているのか、笑っている深月くん。そんな深月くんを睨みつけたあと、私はそっぽを向いて答えた。
「うん。そう。ダメになった」
「そっか」
私の返答に然程驚かない深月くんは、恐らく大体の予測がついていたのだろう。
「……それだけ?」
深月くんの事だから、大体の予測がついていたと思う。とはいえ、それだけなのかと思わずにはいられなかった。
「俺、今口開いても『戻って来い』しか言わないけど」
「それはそれで困るかも」
「だろ?」
少しだけ笑った深月くん。私は、そんな深月くんに「今日は、もう帰るね」という言葉だけを残して背を向けた。
部屋に入る私は、背中から「分かった。そろそろ俺も戻るかな」という言葉を聞いた。その言葉を背に部屋に入ると、寝室に入り、その壁にもたれた。