サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜

朝比奈さんがいない生活なんて考えられないほどに依存しかけていた。でも、そんな私が自分から別れを告げることができた。

多分、それは……深月くんがいたから。


深月くんが、私の事をまだ好きでいてくれて、私に『帰って来い』と言ってくれて、私の隣にいてくれたから。

今思えば、私が苦しい時にいつも隣にいてくれたは深月くんだった。

私が助けて欲しいと思った時に、まるでヒーローみたいに駆けつけて来てくれたのも深月くんだった。

深月くんの言葉と愛があったから、私はこうして強くいられるのかもしれない。

深月くんがいるから、少しだけスッキリしたと思えているのかもしれない。



「深月くん」


壁に右手のひらをくっつけた。

この壁の向こう側にいる深月くんを思いながら、私はゆっくりと瞼を閉じた。


「ねえ……また、私の我儘で振り回しちゃう事になるかもしれないよ」


閉じた瞼の隙間から、大粒の涙が零れ落ちた。

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