サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜

誰にも言えず、一年半もずっと一人胸の内で溜め込んできて、ようやく話せた心の傷。

そして、一年半経った今日、ようやく流せたのであろう涙。


僕は、彼女の涙を見てとても安心した。

心の底から、彼女がこうして泣けた事を嬉しく思った。


僕の目を気にすることなく、わんわんと泣き続ける彼女の瞳からは、今まで溜め込んできたものが止めどなく流れていく。

そんな素直な表情の彼女を初めて見た僕は、多分、この時から彼女に惹かれ始めていた。


────そして。


気がつけば、彼女の空いてしまった心の穴を僕が埋めたい。そう、思い始めてしまっていた。






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