サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜
もし、あの日。僕が彼女に声をかけなければ……なんて、今更考えたって遅すぎる。
僕は、本当に取り返しのつかないことをした。最低で、最悪で、とても酷い事を。
だけど……神様。もし、もう一度。もう一度だけ、チャンスが貰えるなら……。
「もう一度……笑って。凛花ちゃん」
僕は、もう一度、やり直したい。
彼女に出会った事も、彼女に恋をしてしまったことも、全部、全部、含めて。
「……お願い、します」
『生涯を、この人と』
そう決めた、僕の帰る家で待つ彼女と、その彼女の中に宿るひとつの命。
その二つの命を、僕に守らせてください────。