サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜
何度か深呼吸をした後で、意を決したのか俺を真っ直ぐに見て口を開いた。
「深月くん……私……」
「うん」
「私、ね……」
段々と潤んでくる、凛花の瞳。
相変わらず泣き虫だな、なんて思いながら、でも、凛花の言葉の続きを黙って待っていた。
「……もう一度、深月くんに恋をするチャンスが、欲しい。もう一度……深月くんを好きになりたい」
思っていたよりも早く飛び出してきた、凛花の返答。
その返答に、俺は想像以上に驚いた。言葉が詰まりそうな程に、胸が跳ねた。
こんなの、絶対に凛花にはバレたくないけど……嬉しくてしょうがなかった。
「……本当にそれでいいんだな? 因みに、好きになりたい。じゃなくて、なるけど。確実に」
ぼとぼとと大粒の涙を落としている凛花を見て、悪戯に笑ってみる。すると、凛花は少しだけ笑って頷いた。
「私……自分で、別れを告げてきたの」
涙を服の袖で拭いながら話す。そんな凛花の話に俺は耳を傾ける。