サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜

「自分で、ちゃんと今までの関係を終わらせて……辛かったし、悲しかった……だけど、乗り越えられた」

「うん」

「多分、それは……深月くんがいたからなの。深月くんがいつも隣にいてくれたから……だから、私、頑張れた」

「うん」


必死で、次々と溢れる涙を拭いながら言葉を紡いでいく。

きっと、凄く辛かったに違いない。俺が凛花を手離した二年前から、今日まで。


……悔しい。

怒り狂いそうなくらいにムカつくし、悔しい。それは、凛花が好きなアイツでも誰でもなく、凛花を離してしまった自分自身に。


「深月くんが、戻って来いって言ってくれて……嬉しかった。だけど、私の我儘でこれ以上深月くんを振り回したくないし、利用するみたいで、絶対にしたくなくて……でも……本当に、もう一度深月くんとやり直したいと思っちゃったの……」


ごめんなさい、と言ってまた大粒の涙を流し続ける目の前の彼女を、俺は耐えきれず抱きしめた。

< 99 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop