サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜
「自分で、ちゃんと今までの関係を終わらせて……辛かったし、悲しかった……だけど、乗り越えられた」
「うん」
「多分、それは……深月くんがいたからなの。深月くんがいつも隣にいてくれたから……だから、私、頑張れた」
「うん」
必死で、次々と溢れる涙を拭いながら言葉を紡いでいく。
きっと、凄く辛かったに違いない。俺が凛花を手離した二年前から、今日まで。
……悔しい。
怒り狂いそうなくらいにムカつくし、悔しい。それは、凛花が好きなアイツでも誰でもなく、凛花を離してしまった自分自身に。
「深月くんが、戻って来いって言ってくれて……嬉しかった。だけど、私の我儘でこれ以上深月くんを振り回したくないし、利用するみたいで、絶対にしたくなくて……でも……本当に、もう一度深月くんとやり直したいと思っちゃったの……」
ごめんなさい、と言ってまた大粒の涙を流し続ける目の前の彼女を、俺は耐えきれず抱きしめた。