Mission.N
パソコンをにらみつけても、暗証番号が見えてくる訳ではない。

仕方ない。

明日それとなく社長に探りを入れて、暗証番号のヒントになるものを探して見よう。

そう思ってパソコンの電源を落とそうとした時、
「お疲れ様」

後ろから聞こえた声に、あたしの背中から冷や汗が流れたのがわかった。

ウソだ…。

何かの間違いだ…。

1時間前――時間は経っているから、2時間前には退社をしたはずだ。

なのに、どう言うことなの?

何かの間違いであってくれと思いながら、恐る恐る後ろを振り返った。

「――ッ!?」

人間、驚き過ぎると声が出ないと言うのは本当みたいだ。

「1年も隣にいた秘書が産業スパイだったとは思ってもみなかったよ」

そう言って、社長はニヤリと口角をあげた。
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