Mission.N
あたしの正体に、彼はすでに気づいていたようだ。

「どうする?

“鉄の女王”と周りから評されている美人秘書の正体が、実は『霧ヶ峰電気』の産業スパイだったなんてことがバレたらどうする?」

「――なっ…」

ゲスな笑みを浮かべる社長に、あたしは絶句をすることしかできなかった。

そのうえ、情報を渡している会社の名前まで把握しているなんて…。

まさに絶体絶命な状況だ。

どうする?

この状況をどうやって脱出する?

止まっている頭をどうにか動かして、逃げ道を探す。

「はい」

社長がそう言ってあたしの目の前に差し出してきたのは、USBメモリーだった。

「えっ、ええっ…?」

あたしはUSBメモリーと社長の顔を交互に見つめた。
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