Mission.N
「――ッ…」

社長の指があたしのあごをつかんで、彼の方へと向かされた。

「子供の頃に両親を亡くして以来、お互いを支えあって、時には助けあって生きてきた。

何とも美しい、兄貴との絆の物語だな」

茶色の瞳があたしの顔を覗き込んできた。

そう話した社長に、あたしは驚いた。

社長に――いや、自分の過去の話は誰にもしなかったはずだ。

話をしなかったはずなのに、どうして社長がそれを知っているの?

「――ッ、あの…」

質問をするために口を開いたあたしに、
「自分の秘書のことを何も知らないと思った?

とっくの昔に、藍田くんが俺の秘書を務める時に全て調べさせてもらったよ」

あたしの頭の中を読んだと言うように、社長が答えた。
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