Mission.N
じゃあ、その時にあたしの正体を知ったってことなの?

そう思っていたら、
「調べた当初は藍田くんが産業スパイだったことは知らなかったけど」

社長が言った。

「たった1人の兄貴のために罪を犯して、兄貴のために俺のものになろうとしている」

「――それが、何だって言うんですか…?」

茶色の瞳を見つめ返しながら、あたしは言った。

「兄貴のためならば自分の命を投げ出したって構わない…ブラコンもいいところだな」

社長の指が離れた。

「決めた」

社長が言った。

「えっ?」

何を決めたと言うのだろう?

「骨の髄まで…いや、心の底まで君を俺のものにする」
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