Mission.N
あたしは兄を見つめることしかできなかった。

「夏梅も自立したから、彼女と籍だけでも入れようと思うんだ。

式の方は今はちょっと無理だから」

「どう言うことなの?」

式は無理と言う言葉が気になって、あたしは聞き返した。

「彼女、今妊娠しているんだ」

頭を鈍器で殴られたような気がした。

「に、妊娠?」

思わず聞き返したあたしに、
「もう4ヶ月目だって言ってた」

兄が答えた。

そんなことを聞きたかった訳じゃない。

「本当に会うだけでいいんだ。

夏梅はたった1人の俺の家族だから、彼女に会わせたいんだ」

あたしは今、どんな顔で兄を見つめているのだろうか?
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