Mission.N
「あたしはそんなことに怒っているんじゃないんです。

兄が今の今まで隠していたことが許せないと言っているだけなんです」

「それは違うな。

君は兄貴を彼女に盗られるのが嫌だと言っているんだ。

気に入っていたおもちゃを取りあげられた子供みたいにな」

社長の言っていることは的を射ていた。

「彼女に兄貴を奪われるのが嫌だから、兄貴が幸せになることを許すことができない。

結局のところはそう言うことなんだろう」

「――ッ…」

どうしてこんなにも、社長は見抜くのが上手なのだろう?

それに対して太刀打ちができない自分が悔しくて、どうすることもできない。

気持ちを全て見抜かれて、これ以上社長の顔を見たくなくて、うつむこうとした。

「兄貴なんかやめて、俺のものになったらどうなんだ?」
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