Mission.N
社長の人差し指があたしのあごを捕らえて、うつむくことを阻止した。

「――なっ、何の話ですか…?」

茶色の瞳があたしを覗き込んできた。

「兄貴から吹っ切れろって言ってるんだ。

いつまでもブラコンをやってるつもりだ?

今の今までだって兄貴の言う通りにして生きてきたんだろう?」

「――産業スパイに関しては、あたしが勝手に…」

「じゃあ、それもやめるんだな」

呟いたあたしの言葉をさえぎるように、社長が言った。

「兄貴が結婚するんだったら、スパイ活動なんかやる必要なんてねーだろ?」

じゃあ、あたしはどうしろって言うの?

「――あたしは…」

そう…あたしは、
「あたしは、お兄ちゃんのものです…」

呟くように言ったその声は、震えていた。
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