Mission.N
それって、
「産業スパイ…って、ヤツですか?」

そう答えたあたしの声は震えていなかっただろうか。

心臓がバクバクと音を立てて、気持ち悪いくらいに暴れている。

落ち着け…。

落ち着け、あたし…。

背中に冷や汗が流れたのを感じた。

「ええ、そう言うことになるわね」

福山さんは首を縦に振ってうなずいた。

もしかして…いや、もしかしなくてもバレてしまったかも知れない。

その産業スパイの正体があたしだと言うことが、彼女にバレたのかも知れない。

「犯人は捕まっていないんですか?」

そう聞いたあたしに、
「それが捕まっていないのよ」

福山さんは首を横に振った。

「そうなんですか…」

バレていなくてよかった…。

だけど、まだまだ油断は禁物だ。
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