Mission.N
どうでもいいことを心の中でツッコミを入れたけど、福山さんの必死な様子にだんだんと同情している自分がいた。

来週からと言う急な話だけれど、そこまで言われたら仕方がない。

「わかりました」

首を縦に振ってうなずいたあたしに、
「ありがとう、藍田さん!

今週は定時で帰っていいから!」

福山さんがあたしに抱きついてきた。

「わわわっ…!」

突然抱きつかれたことに戸惑ったあたしだけど、同時に心の中でニヤリと口角をあげて笑った。

まじめにコツコツと雑用係を頑張った甲斐があった。

今の状況でも不満はなかったけど、あたしはそれ以上の状況を手に入れたことに満足感を抱いていた。

――騙されてくれてありがとう。

心の中でそう呟いた後、舌を出して笑ったのだった。
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